2008年9月5日金曜日

烏賀陽さんとオリコンの事件で考えたこと

先日、とある夕食会で初めてフリージャーナリストの烏賀陽浩道さん(以前は朝日新聞やAERAで記者だった)とお会いする機会がありました。

「烏賀陽事件」「オリコン訴訟」については、皆さんよくご存知なのかもしれませんが、後の本論に入る前に少しだけ概要を書かせて頂きます。

烏賀陽浩道さんというフリーのジャーナリスト(個人)が「インフォバーン」社発行の月刊誌「サイゾー」06年4月号の記事「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」に対するコメントを電話で求められ、そのコメントがサイゾー誌に掲載された。(烏賀陽さんが意図する形での掲載ではないらしい件はさておき)

株式会社オリコンは「事実誤認に基づく名誉棄損行為に対する5000万円の損害賠償と謝罪」を求めて、烏賀陽さんを東京地裁に提訴。

烏賀陽さんに、何か協力できることはないかとお聞きしたところ、ブログに書いてほしいとのこと。
以下、私なりのまとめと思うところを書きました。

<時系列>

●2003年2月烏賀陽さんがオリコンについて書いた記事が「アエラ」03年2月3日号に掲載された。
http://ugaya.com/private/music_jpopcolumn18.html
    内容は、オリコンのデータとPOSデータ(サウンドスキャン社)のデータが乖離しているのはなぜか?という疑問を提示したもの。
    この記事に対して当時オリコンの小池社長から直々にお怒りの電話があったそうです。

●2006年4月「サイゾー」06年4月号51ページの「ジャニーズは超VIP待遇!?事務所とオリコンの蜜月関係」という1ページの記事に、烏賀陽さんのコメントが20行ほど掲載された。
http://ugaya.com/column/0604saizo.html


●2006年12月13日、東京地方裁判所からサイゾー編集部宛に、損害賠償訴訟の訴状が送付された。内容は、オリコンが烏賀陽に対して5000万円の損害賠償を請求するというもの。
訴状はこちら

●2006年12月19日、オリコンがプレスリリースを発出。
http://www.oricon.co.jp/news/confidence/40446/

内容は以下の通り

    1)「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)

     弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社のWEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。

    2)「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)

     昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。


●2006年12月21日、オリコンの小池社長の声明「謝罪するならば提訴を取り下げる」
http://www.oricon.co.jp/news/confidence/40565/

 今回の提訴は、烏賀陽氏が平成15年2月発売の週刊誌「AERA」において根拠不明のまま弊社を誹謗中傷したことが発端にあります。本年3月発売の月刊誌「サイゾー」においても、弊社のランキングに対しての「明らかな事実誤認に基づく発言」、すなわち「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」「オリコンは予約枚数をもカウントしている」というコメントを烏賀陽氏は寄せています。弊社が問題にしている「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」は烏賀陽氏のコメント部分のみに掲載されていました。弊社が烏賀陽氏に宛てた内容証明郵便に対する回答FAXの中で、烏賀陽氏は、ご自身でコメントの内容を修正・編集された旨を述べております。これが烏賀陽氏への提訴に及んだ理由です。また、烏賀陽氏のマスコミへの影響力が決して小さくないことも我々は考慮に入れざるを得ませんでした。

 ただ、我々の真意はお金ではありません。個人攻撃でもありません。上記のとおり、烏賀陽氏に「明らかな事実誤認に基づく誹謗中傷」があったことを認めてもらい、その部分についてのみ謝罪をして頂きたいだけです。その際には、提訴をすぐに取り下げます。


●2007年2月8日烏賀陽さんがオリコンに対して「訴訟権の濫用」として反訴
反訴状 

●2008年4月東京地裁判決で、烏賀陽さんが敗訴。100万円の支払いを命じる判決。
Oh My News 記事

<問題点>

論点をまとめようと思ったら津田大介さんのブログ「音楽配信メモ」に非常に詳しく書かれていたため
こちらを読んで頂くことをお勧め致します。
津田さんのブログ記事

1)記事を掲載した「サイゾー」および発行元「インフォバーン」は訴えられず、烏賀谷さん個人が訴訟対象となった。

本来は筆者であるサイゾー副編集長/サイゾーの編集長/インフォバーン社であるはず。
今回は、善意でサイゾーの取材に受けたにすぎない情報提供者である烏賀谷さん個人が訴えられました。
今後インタビュー/取材を受ける人はそのようなリスクを負わなければならないのでしょうか。

2)5000万円という金額の根拠は?

訴訟を受ける側としては、高額訴訟だと弁護士費用がかさみます。
現在は弁護士費用は自由化されているが、参考まで旧日弁連の報酬規定に従うと
着手金が219万円、勝訴した場合には請求金額の10%、つまり5000万円の訴訟を受けると500万円
合計719万円を弁護士に支払わなければならなくなります。
金額はさておき、個人にとって訴訟費用の負担は重いでしょう。

3)オリコンのデータ

オリコンが開示しているデータとPOSデータの間に乖離があるのではないかという疑問で、
その原因は予約枚数を入れているかどうかが裁判の争点にもなっています。

こちらについては、津田大介さんのブログ「音楽配信メモ」に識者へのインタビュー記事が掲載されています。

4)サイゾーの編集責任

サイゾーの記事は、サイゾーのコメント→烏賀谷さんのコメント→サイゾーのコメント
という形でサンドイッチされており、誤解を招きそうな構成になっていました。

かつ、烏賀陽さんは記事を全文見せてもらったところ
自分が言ったことからニュアンスを変えて書かれており、
掲載を断ったが掲載されてしまったとのこと。。。

<訴訟の内容以外で私が問題だと思うこと>

1)個人が、メディアからコメントを求められて回答したら訴訟リスクを負うの??

私もときどきですが、メディアからコメントを求められることがあります。
事実ではないことを話すなどは言語道断、
私は事実のみを回答しているわけですが、事実を話して、事実が掲載された場合であっても訴訟リスクは負います。

事実を話して、事実ではないことを掲載されることもありえます。
社会人になってからのインタビューで問題のある記者さんにお会いしたことはないのですが、
実は高校時代に実名/写真入りである雑誌社の座談会に出席したことがありまして
記事は事前確認はさせてもらえず、言ってもないこと(しかも悪いこと)を
私の発言として掲載されてしまったことがあります。

その時は訴訟沙汰になるほどのことではありませんでしたが、コンテクストが違ったら。。。
かつ通常はその場合雑誌社等のメディアが責任をもって編集を行い、掲載しているわけですから
訴訟リスクを負うはずの物が個人にくるというのは非常に恐ろしいことだと思います。

今後、個人ブログで書いた内容に対する訴訟ケースが発生することもありうるのではないかという懸念があります。

2)弁護士データベース

上記の通り、個人で訴訟されてしまった場合、たいていの場合は寝耳に水だと思います。
訴状が届いてから1ヶ月以内に答弁書を書かなければならないため、早急に弁護士を捜し、準備をして頂く必要があります。

しかし、いきなり訴訟を受けてすぐにその分野で優秀な弁護士を探せるものでしょうか。。。?

弁護士は医者に似ていると思います。
外科医や内科医、歯科医等のエキスパートがいて、
同じお医者さんでも分野が異なれば安心して任せることはできない。
私が靭帯の手術をした時は、スポーツ医学の第一人者で、膝の靭帯を多く扱い、
患者さんの評判がよいお医者さんを必死に探して手術をお願いしました。

弁護士も会社間の問題を扱う人から離婚や相続等を専門とする方など得意分野があるはずですが、
どの弁護士さんがどんな案件を得意としているのか、一般個人が知りうる術は非常に少ない。

分野別に、優秀な弁護士さんのデータベース(過去の取り扱い案件や内容、連絡先、依頼者の満足度クチコミ)がまとまったサイトがあればいいのに。。。。

実は弁護士データベースのサイトは既にあるのですが、自己申告で分野を入れているようで、色々な分野を見ると同じ人が何度も出て来ます。誰が、どの分野のエキスパートなのかがわからない。(私が知らないだけだったらどなたか教えてください)

裁判を起こされたら、命運は弁護士さんにかかっているので非常に重要なことだと思います。


3)裁判官データベース

裁判を起こされたら、我々はいやがおうにも「裁かれる」立場になり、「裁く」のは裁判官です。
世論が何を言おうと、聴衆がどう思おうと、裁判官がどのような判決を出すかに全てがかかっています。

昔、大学時代にディベートをやっていたときに、審判がうなずく/首を傾げる等の一挙手一投足を
見逃さずに戦っていたことを思い出します。観客がどう思おうと、勝敗には関係ない。

知識も、考え方も、立証責任のハードルの高さも審判によって異なるので
審判についての情報収集は欠かせないし、情報があっても反応を見ながら試合を進めないと勝てない。

ディベートの審判によってはjudging philosophyという「どのような考えを前提に審判を行っているか」を事前に開示する人もいます。

裁判でも同じですよね。

だったら、裁判官について、過去の取り扱い案件や内容、クチコミがまとまったサイトがあればいいのに。。。。

実は裁判官データベースのサイトは既にあるの
ですが、私が見つけた裁判官データベースは、どの裁判官がどこの裁判所にいついたかということしか載っていません。(私が知らないだけだったらどなたか教えてください)

一応、Knolでこんなページを作ってみたのですが、Knolはあまりこういうことには向かない気もする。
基本的には、みんなが情報をアップできるデータベースである必要がある。
Wikiaがいいのか何がいいのか、模索してみようと思います。。。


<参考URL>

ITジャーナリストの津田大介さんのブログ「音楽配信メモ」に掲載されている記事一覧

前述ですが、必読→オリコン訴訟問題の現状の詳細なまとめ

オリコンが自分たちに都合の悪い記事を書いたジャーナリストを潰すべく高額訴訟を起こす
オリコンのプレスリリースに対する疑問と今後の争点
烏賀陽さんのサイトに■お詫びと訂正■が
オリコン訴訟問題について音楽業界関係者に取材しました
オリコン訴訟問題についてより深く考えるための参照テキスト
オリコン訴訟問題で烏賀陽氏が株式会社オリコンに対して反訴を行う
オリコン烏賀陽裁判の地裁判決文をアップしました


烏賀陽さんのサイト
烏賀陽さんのYouTube channel



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