2008年9月26日金曜日

「できないことをやる」 by 藤木淳さん

今回、アルスエレクトロニカで、藤木淳さんとお会いすることができました!


お忙しい中お時間をとってくださった藤木さん、ありがとうございました。紹介してくださったYuichirockさん、ありがとうございました!!


藤木淳さんは、NHKのデジスタ、文化庁メディア芸術祭ほか数々の賞を受賞されている非常にすばらしいクリエイターさんで、今回のアルスエレクトロニカでは「Extended Cognitive Tools」という作品でインタラクティブアート部門のhonorary mentionsの受賞をされています。


我々の眼に見える「見た目」と「実際」のギャップ、2次元と3次元のギャップを使った、非常に面白い作品です。Incompatible BLOCK , OLE Coordinate System , Constellation という3つの作品から成ります。だまし絵が好きな方は必見です!!



interview with Jun Fujiki

藤木さんの特許や受賞歴等はこちらからご覧いただけますが、中でも有名なのはソニー・コンピュータエンタテインメントのPSPのソフト『無限回廊』。


アーチストとして活躍している方は多いですが、それをプロダクトまで落とし込める人、そしてヒット商品を育て上げられる人は少ない。「アート」と「商品」としての設計はまた異なりますし、アーチストとしての役割と製造/販売など様々な役割/工程で関わる人と全体が調和してこその「商品」です。


藤木さんのお話は非常に面白かったのですが、中でも印象に残った言葉が「できないことをやる」ということ。


きっと意味はいろいろあると思います。

他の人にはできないことをやるという差別化の意味もあるかもしれないし、

今の自分には「できない」ことをストレッチしてやることで自分を成長させるという意味もあるかもしれないし、

本当はできないことを作って観客をあっと驚かせたりということかもしれないし。

今回の作品のように二次元でできないことを三次元で実現したり、リアルの世界ではできないことをプログラムで実現したりということも、「できないこと」を実現している。


何度もこの記事に戻って申し訳ないのですが、南條さんも奥山さんもみんな「驚きが必要」とその重要性を説いている中、藤木さんの作品にはいつも「驚き」がある。その源は、いつも藤木さんが「できないことをやる」精神でチャレンジし続けているからかなあと思いました。


数年前に明和電気の土佐社長の、ナンセンスプロダクトデザインワークショップを受けたときに、第一日目にやったのが発想法。

まずは朝起きてから今までに触ったものを全部書き出す。20個ぐらいだったかな?
で、全部に「おかしな」をつける。「おかしなまくら」「おかしな時計」「おかしなパソコン」「おかしなトイレ」。。。
次にそれぞれどんなものかを書く。「おかしなまくら」っていうのはツンツンしていてその上で眠れないようなまくら?
次に、「ツンツンしていてその上で眠れないようなまくら(おかしなまくら)」と「逆流時計(おかしな時計)」を合わせたらどんな物ができるか、以降どんどん書く。
最後にはそれで一個のおかしなものができあがるので、それの絵を描く。


それはもう変わったものばかり描き上がってきて、「できないもの」で「驚きのある」ものが出てくるわけで、それをプロダクトとしてデザインして、チームで制作して、最後の日にはプレゼンをするというワークショップだったのでした。書いてていきなり思い出した。


「アートで終わるのではなく、どうやったらプロダクトにできるか考えろ」というのも土佐さんの教えの一つでした。明和電気はそれがめちゃめちゃうまい。
明和電気で有名な魚の骨の形をした電源コード「魚コード」は、アート作品は固いけれどそのまま売ったら怪我をされちゃうので柔らかくして、強度を上げて、パッケージングを考えて、とか。今回のアルスでは、Reactableの人たちも今は手で作っているので、今後のプロダクト化のところでどうしようかなあとおっしゃっていました。このアートから商品化の大きな一歩というのは、今後の鍵になりそうな気がします。。。と脱線しまくりサーセンエントリーでした。


ちなみに無限回廊はリンツのゲームソフト屋さんでも販売されていたそうです!



2008年9月23日火曜日

Stanford Engineering Everywhere

スタンドード大学がStanford Engineering Everywhere(SEE)」といって、工学に関する基礎的な授業を無償でオンライン公開する試みを始めたそうです。

スタンフォード大学、コンピュータサイエンスなどの授業ビデオやテキストをCCライセンスでオンライン公開 


講義のビデオや講義内容のテキスト等のさまざまな資料やテストなどをオンラインで提供するもので、現在コンピュータサイエンスと人工知能、線形システムの最適化という3分野、合計10の講義が公開されています。


Introduction to Computer Science
Artificial Intelligence
Linear Systems and Optimization


動画はYouTubeやiTunesによるビデオポッドキャスト、BitTorrentなどで公開されていて、講師が話した全文をテキスト化したものもダ
ウンロード可能となっています。公開されている資料や動画は、すべてCreative
CommonsのAttribution-Noncommercial-Share Alike 3.0 Unported
Licenseでの公開。


サイトを見てみたら、フッターに:

The launch of Stanford Engineering Everywhere was made possible with the generous support of Sequoia Capital.
*


Yahoo!やGoogleなど数多くのITベンチャーに投資してきたベンチャーキャピタルのSequoia Capitalが資金提供しているとのこと。すばらしい。



2008年9月22日月曜日

FREESOULS

Joiが色々な人の写真を撮影して、Creative Commons ライセンスでたくさんアップしているのをご存知の方は多いでしょう。

これがJoiのFreesouldというタグをつけてFlickrにあげた写真の数々。

 

自由に使えて、クオリティが高い、人物写真が非常に少ない。誰かについてWikipediaの記事を書こうと思ってもよい写真がない。だったら自分で撮ってしまえということで非常に多くの写真が撮影されました。

 

そんなこんなで始まったFREESOULSプロジェクトの第一回集大成として、本の出版が決まりまして、ほぼ完成し、Ars ElectronicaでJoiが編集者のChristopherとパネルディスカッションを行いました。

 

動画をどうぞ!バックの写真の美しさにもご注目ください。

 

 

 

freesouls

Joiだからこそ撮れる、すばらしい写真の数々だなあとつくづく思います。

 

中でも私のお気に入りをいくつかピックアップ。残念ながら本には入らなかった写真もありますが。。。

George Lucas and JJ Abrams

 

George Lucas and JJ Abrams by Joi.

 

Howard Rheingold

 

Howard Rheingold by Joi.

 

Gilberto Gil

 

Gilberto Gil by Joi.

 

Hiroyuki Nakano

 

Hiroyuki Nakano by Joi.

 

John Perry Barlow

 

John Perry Barlow by Joi.

 

Steve Jobs and Bill Gates

 

Steve Jobs and Bill Gates by Joi.

 

Benjamin Mako Hill

 

Benjamin Mako Hill by Joi.

 

Ken Mogi

 

Ken Mogi by Joi.

 

Vint Cerf

Vint Cerf by Joi.

 

Tei Towa

 

Tei Towa by Joi. 

Cherry Cheng

 

Cherry Cheng by Joi.

 

Hiroaki Kitano

 

Hiroaki Kitano by Joi.

 

Cory Doctorow

 

Cory Doctorow by Joi.

 

Clay Shirkey

 

PoV Clay by Joi.

 

Robert Kaye

 

Robert Kaye by Joi.

 

Ryuichi Sakamoto

 

Ryuichi Sakamoto by Joi.

 

Dominique Chen and Lawrence Lessig

 

Dominique Chen and Lawrence Lessig by Joi.

 

Mizuka

 

Mizuka by Joi.

 

Justin Hall

 

Justin Hall by Joi.

 

Merci, Pixley and Justin

 

Merci, Pixley and Justin by Joi.

 

 

Samuel Klein aka SJ

 

Samuel Klein aka SJ by Joi.

 

Jim O'Connell

 

Jim and his Leica III by Joi.

 

Kazuya Minami

 

Kazuya Minami by Joi.

 

Miki Aiba

 

Miki Aiba by Joi.

 

Marcell Mars

 

Marcell by Joi.

 

Oki Matsumoto

 

Oki Matsumoto by Joi.

 

Andrew McLaughlin

 

Andrew McLaughlin by Joi.

 

 

上記の写真はすべて、Creative Commons Attribution license Photo Taken by Joichi Itoです。

 

 

ちょっとだけ、舞台裏。(会社から休暇をとってサンフランシスコに撮影に行ったときの写真)

下記の写真はすべて、Creative Commons Attribution Non-Commercial Share-Alike license

Photo Taken by Fumi Yamazaki です。

 

被写体のMichelleも大笑い

Michelle by fumi.

 

撮影者Joiも大笑い

 

Joi shooting Michelle by fumi.

 

 

それ、頼んでないから!(笑)

Joi shooting Michelle by fumi.

 

撮影を見に来たColinも笑顔

 

Collin watching the shooting by fumi.

 

Howard Rheingold の撮影は屋根裏からも :)

 

 

 

Joi by fumi.

 

CC photowalkで外で写真を撮っていたとき。三脚抱えて歩いてます :P

 

joi.jpg by fumi.

 

これもCC Photowalkから。写真について講義してくれました。

 

joi teaching photography.jpg by fumi.

 

 

さて、いよいよ出版です。

 

50部限定のボックスセット版がほしい方はchrisアットマークraysend.comまで。

通常版はAmazonから予約もできます。

 

FreesoulsのFotonauts widgetも!

 

 

freesouls



iSummit 2008-labs

今回のiSummit2008では、5つのラボ(もしくはトラック)がありました。
 
それらを紹介するのがBoiler room セッション。それぞれのラボが「うちに来てね!」とアピールする場です。

iSummit08 boiler room
Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki

 

 5つの labs と 1つの Parallel Event: 

Open Education Lab(教育)

Open Business (ビジネス)
 
私は  "Open Business Thinktank"というセッションに参加しました。参加者は、自分のプロジェクト・ビジネスについて発表することができ、また基調講演スピーカーの多くはこのラボに来ていたので彼らのアドバイスを受けることができます。特に、 Larry Lessig がコメンテーターとしてついていたので、彼のアドバイスやフィードバックを受けることができたのは、参加者たちにとっては非常によい機会だったのではないかと思います。

ビデオもちょっとだけ撮りました:
 
iSummit08 open business track

 


Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki


Local Context Global Commons: Open Publishing(ローカルコンテクスト・グローバルコモンズ)

 
このセッションの中で"Managing the copyright of open video projects" というセッションがあり、 BlogTVというテレビ番組を作っていたことがあったのでそのときの権利処理とかの話をしてほしいとのことで行ってきました。BlogTVでは、企画段階からテレビでの放送後はCCライセンスでYouTube等にアップすることを前提としていたので、音楽・出演者・コンテンツなどすべてCCライセンスもしくは手作りでやっていました。


セッションの動画も撮りました。ほとんどフェアユースについての議論でした。

iSummit08 DIY video track


Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki


これが日本語のセッション。
私がお願いして出演していただいていたスピーカーの方もおられたので、私はほぼこちらに参加していました。

 
Parallel Event: 

アカデミック系のリサーチセッションは今までなかったのですが、今回同時開催イベントとして行いました。

Closing Event 

最後のクロージングイベントの際に、それぞれのラボから3日間で話し合ったことのサマリーが行われました。
動画でどうぞ!

iSummit08 closing event

Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki

また、これらのラボとは別に、 "Internet Bill of Rights"というコマがありました。スケジュールの都合上私は参加できなかったのですが、下記に資料がありますのでご参考まで:
 
bill of rights



iSummit2008-Mohamed Nanabhay基調講演

Mohamed Nanabhay  さんは AlJazeera Network の新メディア事業のトップ。 "The Commons in the Corporation : The challenge of raising awareness within media corporations"というタイトルでスピーチを行いました。.


メディア企業・情報産業にとって、現在、新プラットフォームの登場・テレビ視聴者の減少等、すべてが著しく変化しています。 

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30才以下の (MySpace世代と呼ばれる)メディア接触とメディア利用、メディア共有のあり方はそれまでの世代と全く異なります。パソコン、ゲーム機、携帯電話などあらゆるツールを使いこなします。親はニュースについてCNNで放送された時点で知りますが、子供は他のメディアを使って親より先に情報を得ているのです。  

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MySpace世代の若者たちは、ニュースを Google News, Facebook や podcast等で入手します。コンテンツの制作も様変わりしました。ジャーナリストだけでなく、一般市民も写真を携帯カメラで撮影し、その場でさまざまなプラットフォームにすぐにアップしてしまいます。 コンテンツは簡単にリミックスされ、そのコンテンツのサイクルが回り始めます。だからこそ著作権の話が面白いのです。

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メディア企業はこういった状況に対して、どうしたらよいのでしょうか?
 
Mohamedさんは6点ポイントをあげています :
 
1) Reputation(評判)- 組織の評判を上げること。革新的な企業としてみてもらうことが重要。
2) Distribution(流通)- 色々な言語の人に情報を届けること
3) Financial(財務)- オンラインビジネスモデルを見つけること
4) Community Empowerment(コミュニティの力)
5) Respect our audience(オーディエンスを尊重する)
6) Challenge competitors(競合にチャレンジ)

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Al Jazeera での経験からのアドバイス:  

小さく始めて先行事例を作る

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戦略的な価値を立証する-YouTubeを利用して動画をアップし、 3500万のビューを稼いだ。数字は強い。

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Al Jazeera はコンテンツの一部を Creative Commons licenseで提供することになりました. 

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真実を伝えるのは難しいことだが、真実を伝えないことはもっと難しい。

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スピーチの動画はこちらにアップしてあります。
 
 





























iSummit08 keynote speech by Mohamed Nanabhay
 
スピーチのスライドはこちらにアップしてあります。
 
mohamed


iSummit 2008-Joichi Ito基調講演

Joi は Creative Commons のCEOとして、 "The Status of the Commons"というたいとるで

スピーチを行いました。



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Photo CC-BY-SA by Jean-Marie Hullot

オープンイノベーションの階層の話から始まりました。 


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Ethernet, TCP/IP や HTTP は無料で接続し、流通させることを推進するものでしたた。今はたくさんのコンテンツがネット上に存在し、その多くがアマチュア革命によるもの。失敗することのコスト(イノベーションコスト)が下がったことにより、アマチュアが色々なことをできるようになってきています。そして今度は著作権の問題が浮き上がってきました。そこで、 Creative commonsの取り組みが重要になります。

 Creative Commons- license の採用状況:
 
  
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CC license のコンテンツの増加の図。 

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最新事例の紹介:ロックバンド Nine Inch Nails は "Ghosts I-IV"  というアルバムを CC licenseでリリースしました。NINのサイトに行けば、36曲中 9 曲は無料でダウンロードでき、 5USD 払うと 36 曲すべてをダウンロードできます。 CD は 10USD, ハードカバーのデラックス版は 75USD, そして限定版のボックスセットは 300 USD。 こうしてNINは1週間で1600万ドル(約16億円) を売り上げました。サイトでの直接販売だったため、ほとんどの売り上げがアーチストの手に渡ったといいます。

Joi は、現在著作権料の管理団体との問題を指摘する。彼らはすべてのアーチストについて、同じライセンスを適用しようとするが、アーチストはそれぞれ事情が異なるのではないか。CC はアーチスト中心に考えたときに、どのようなソリューションがアーチストにとってベストなのかを、アーチストと一緒に考えていきたい、と話す。 

詳細は書きませんが Science Commons や CC Learn の紹介等もこの後行われました。


Joiのスピーチの映像もアップしました。

isummit08 keynote speech by Joi Ito

 
Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki
 
Joiのスピーチのスライドはこちら
 
 
Joi1


スピーチ時間が短かったので色々切りましたが、切る前のバージョンを見たい方はこちら
 
Joi2


iSummit2008ーHeather Ford

iSummit2008 について、ブログを書こうと思いつつものびのびになっておりました。

気負うとまた書けなくなるので、ががっと書きます。

 

iCommonsのHeather Fordの基調講演。

"The Future of the Global Commons -An introduction to the commons, the iSummit and how you can help-".

 

Commonsは、産業革命前は「共有地」から始まり、ネット社会の現在では情報や知識を共有することをさします。

 

しかし、現在の世界はアクセス・参加・ロイヤリティなど何をとっても平等にはなっていません。

世界地図
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インターネット利用者数でマッピングした世界地図 
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携帯電話利用者数でマッピングした世界地図 
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ロイヤリティ支払額でマッピングした世界地図 
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iSummitは世界中から人々が集まり、さまざまなことについて話し合う場です。
基調講演もメディアと著作権、ファッションと著作権、日本のMADとの取り組みなど非常に多岐にわたりました。
 
 

iSummit06 と iSummit07の写真 
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iSummit08の写真 
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Photo CC-BY-SA by Fred Benenson 


運営チーム・スポンサー・パートナーも国境を越えてiSummit2008を実現するために尽力しました。
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Heatheのスピーチの一部をこちらにアップしました:
 
 
iSummit08 keynote speech by Heather Ford

Video CC-BY-NC-SA by Fumi Yamazaki 
 
Heatherのスピーチのスライドはこちら:
 
 
 
Heather

Slides CC-BY(unless otherwise noted) by Heather Ford