2008年10月14日火曜日

Creative Commonsの「非営利」ライセンスについて考える

先日、質問を受けたので、ちょっとエントリーを起こします。



<まとめ>

Creative Commons ライセンスを採用したからといって、あなたがお金儲けができなくなるわけではありません。
Creative Commons の「非営利」ライセンスを採用したからといって、あなたがお金儲けができなくなるわけではありません。
Creative Commons の「非営利」ライセンスを採用したからといって、誰かにお金儲けをさせることができなくなるわけではありません。
Creative Commons ライセンスを採用することで儲けが多くなるか少なくなるかは、わかりません。
Creative Commons の「非営利」ライセンスの「非営利」の定義については現在研究プロジェクトが発足しています。


<非営利ライセンスについて>


**例えばあなたが何かキャラクターを作って、そのキャラクターにCreative Commons 営利OKのライセンスを採用した場合**

あなた自身がキャラクターグッズを作って販売しても問題ありません。
他の人がキャラクターグッズとか色々な物を作って販売してもライセンスに従って行われているのであれば(ちゃんと著作権者の名前を表記するとか)、問題ありません。

**例えば
あなたが何かキャラクターを作って、そのキャラクターにCreative Commons 非営利のライセンスを採用した場合**


あなた自身がキャラクターグッズを作って販売しても問題ありません。
他の人が勝手にキャラクターグッズを作ってお金儲けをしてはいけません。非営利ライセンスですからあたり前です。

ただし、「無断で」商用利用できないだけで、「決して商用利用できないわけではない」というところがミソです。

CCのFAQより引用します。

NonCommercial. You let people copy, distribute, display,
perform, and remix your work for non-commercial purposes only. If they
want to use your work for commercial purposes, they must contact you
for permission.


「非商用ライセンスの場合、非商用での利用のみを許可します。利用者が商用利用をしたい場合は、あなたに許可を得なければなりません。」要は、別途許可を得れば商用利用も可能なのです。

So “NonCommercial” means that the work cannot be used commercially?

Not quite. The “NonCommercial” license option means that you do not
receive the commercial rights via the Creative Commons license. You can
always approach the licensor directly to see if they will separately
license you the commercial rights.

「Q:非商用ライセンスのコンテンツは、商用利用はできないの?A:あくまでクリエイティブコモンズライセンスで与えられている権利が非商用に限定されるということであって、商用利用の権利について権利者に直接交渉することはできますよ」


他の人があなたにキャラクターグッズを作ってお金儲けするという特約を結びたいという話があれば、そのような直接交渉を行い、キャラクターグッズを作ってもらい、レベニューシェア等でお金儲けするということも可能、ということです。


で、この特約的なところを円滑に促進するためにCC+という物ができましたという話は、以前のエントリーで紹介していました。

いちいち一件一件問い合わせがくるのを対応するよりは、CCライセンスは非商用でこのライセンス。これ以外のビジネスディールを行いたい人はこちらを見てね!というリンクをはっておくという仕組みになっています。

CCのサイトだとこちらが詳しいです。

CC+ is a protocol providing a simple way for users to get rights
beyond the rights granted by a CC license. For example, a work's Creative
Commons license might offer noncommercial rights. With CC+, the
license can also provide a link by which a user might secure rights beyond noncommercial
rights -- most obviously commercial rights, but also additional permissions or
services such as warranty, permission to use without attribution, or even access to performance or physical media.

The CC+ architecture gives businesses a simple way to move
between the sharing and commercial economies. CC+ provides a
lightweight standard around these best practices and is available for
implementation immediately.

Use cases: Restrict commercial use with a CC license with the NonCommercial
condition, and then use a separate agreement with some party (could be
yourself or third-party) to broker commercial rights (licensing, sales,
reproduction, etc).



<クリエイティブコモンズによる機会創出・機会損失>


クリエイティブコモンズによるお金儲けが「できない」わけではないというのが上記の論点。


もう一つの論点は、クリエイティブコモンズライセンスを採用することによって、機会創出がどのくらいあるのか、機会損失がどのくらいあるのかということです。


そもそも論として、all rights reserved にして囲っていると、よいコンテンツ・よいクリエイターが認知されず、認知されないと興味ももたれず、興味をもたれないと購買されず、購買されないとお金が儲からない。。。という話があります。
昔CCのCEOであるJoiが、クラブでDJをやっていたときにはミュージシャンの人が「かけてください!」とレコードを持ってきたものらしい。今も新人のミュージシャンの人はラジオ局とかを回って「かけてください」とCDを渡して歩くらしいと聞いたことがあります。
このへんが機会創出の話。


まずは無料でも露出を増やして、次につなげる。クリエイティブコモンズには色々な側面があるけれど、そういった側面も大きい。だからこそColumbiaはOtorevoで全くの新人アーチストだった Good Crew のvocal trackをCCライセンスにしてリミックスコンテストを開催しました。もちろんCDは有料で販売しているのですが、vocal trackをCCライセンス。プロモーションビデオはYouTube。


CCライセンスでサンプル的な物(音質が低い・画質が低い)を出して、高クオリティの物はお金をもらって販売するという手法は色々なところでとられていて、有名なものとしては以前も紹介しましたが Nine Inch Nails が"Ghosts I-IV"  というアルバムを CC licenseでリリースしたというもの。NINのサイトで36曲中 9
曲は無料でダウンロードでき、 5USD 払うと 36 曲すべてをダウンロードできる。 CD は 10USD,
ハードカバーのデラックス版は 75USD, そして限定版のボックスセットは 300 USDで販売。 こうしてNINは1週間で1600万ドル(約16億円) を売り上げ、サイトでの直接販売だったため、ほとんどの売り上げがアーチストの手に渡ったといいます。ただ、 NIN は大物アーチストなので特殊事例ですけれど:P


もう一つが機会損失の話。


CCライセンスで公開せずにコピー不可で流通をさせないようにし、だからこそ物が売れるんだという話です。CCライセンスで公開した結果、CDを買う人が少なくなるのではとか、DVDボックスが売れなくなるのではとか、そういう話ですね。


さて、テレビ番組を勝手にYouTubeやニコニコ動画にアップしてはいけません!が、涼宮ハルヒの事例で、角川さんが紹介していた話は一つの参考事例にはなると思います。(一般化はできないけれど)

涼宮ハルヒは最初、TOKYO MX、TVK、チバテレビ等の局で放映されていてキー局でやっておらず、YouTubeにアップされて知名度が向上。そしたら今度、YouTubeに英語字幕付き(fansub)がでてきて角川さん的には「うっ」と思っていたが英語でDVDを発売したら北米だけで6万枚も売れたとのこと! fansubが広告効果を生んでいたということです。(日本でも8万枚なので、6万枚売れたのはすごい)


YouTubeにアップされることで、ハルヒのDVDを買うはずだった人が買わなくなった機会損失と、YouTubeにアップされなかったらハルヒなんて知らなかった人が買うようになっていた機会創出はオンバランスでどのような物なのかは、事例の積み重ねでわかっていく物なのでしょう。Creative Commons ライセンスで発売されたコンテンツが、認知が上がって却って売れたのか、オンラインで読めるから却って売れなくなったのかはいくつか検証事例が出ていますが、まだまだ結論は出ていないと思います。以前こちらのブログで昔書きましたが:

1つはO'reilly の Asterisk: The Future of Telephonyという本で、 O'reilly の「CCライセンスにすることによって本の販売数は上がるのか/下がるのか」という研究の一環としてCC Attribution Non-Commercial Non-derivativesライセンスで公開。結論的には、ダウンロードを開始したからといって本の販売数の傾向に大きな影響はでていないようであり、Asteriskというこの本は技術書としてはかなりの売れ行きの部類に位置したといいます。

もう1つはThe Human Sciences Research Council (HSRC)で、南アフリカの研究機関が研究結果をまとめ、書籍化した物をCCライセンスのPDFで公開した結果、売上げが3倍になったといいます。ただし、特殊なケースですので一般化はできません。


その他のケースについてはCCサイトで膨大なケーススタディが公開されているので、興味がある人はのぞいてみてください。


<「非営利」ってなに?>


もう一つの論点が、そもそも非営利って何?ということで、これは様々な議論がされています。


物を作って販売する等のあからさまな営利活動はわかりやすい。でも、商用なのか商用ではないのかがわかりにくい例も多い。よく取りざたされるのがブログ。ブログでお金を儲けていないからOKという意見、ブログにAd Sense等の広告を掲載していたらお金儲けているからNGじゃんという意見、ブログに掲載しているAd Senseなんて運営費のたしぐらいにしかならずお金儲けているうちに入らないという意見、Ad SenseをはっているかはっていないかでCCコンテンツを利用できるかできないかが決まるなんておかしいという意見等々。

広告に使われたら営利使用か?→営利とみなされるのが通例。
NCコンテンツを見るには必ず広告を見なければならない仕様になっていたら営利使用か?
レコード店のpodcastでCC-BY-NC-SAライセンスの曲だけかけていたらライセンス違反か?
NCライセンスのコンテンツを検索した検索結果に広告が掲載されていたら?
それがNPOがやっているものだったら?教育目的だったら?

で、このあたりを整理する研究プロジェクトが発足しています。

Creative Commons Launches Study of “Noncommercial Use”


The nonprofit organization Creative Commons has launched a research
study that will explore differences between commercial and
noncommercial uses of content, as those uses are understood among
various communities and in connection with a wide variety of content.
Generous support for the study has been provided by the Andrew W.
Mellon Foundation.


Joiのコメント:


“The NC term is a popular option for creators choosing a Creative
Commons license, and that tells us the term meets a need. However, as
exponentially increasing numbers of works are made available under CC
licenses, we want to provide additional information for creators about
the contexts in which the NC term may further or impede their
intentions with respect to the works they choose to share, and we want
to make sure that users clearly understand those intentions. We expect
the study findings will help us do a better job of explaining the
licenses and to improve them, where possible. We also hope the
findings, which will be made publicly available, will contribute to
better understanding of some of the complexities of digital
distribution of content.”


CCライセンスのうち、非商用ライセンスを使う人は多い。ライセンスをつける人も使う人も「非商用」がさす定義をきちんと理解できるよう定義することが重要で、この研究はそのために行われる。

この研究をleadするのはVirginia

“Developments in technology, social practices, and business models
are pressing the question of what should count as a commercial use,”
explained Creative Commons Special Counsel Virginia Rutledge, who is
leading the study. “The answer to that question should come from
creators, who should be able to specify what uses they want to permit,
subject to the limitations and exceptions to copyright or other
applicable law. Creative Commons is fortunate to have a stellar group
of legal, public policy, and information technology experts advising on
this project, as well as the help of its extensive international
network of affiliates.”


何が商用で何が非商用かは技術・社会通念・ビジネスモデル等の側面から沸きあがっている大きな質問で、その答えはクリエイターが何は許可し、何は制限すべきと考えているかを尊重すべき。


Research is expected to be completed early in 2009. The study will
investigate understanding of noncommercial use and the Creative Commons
NC license term through a random sample survey of online content
creators in the U.S., a poll of the global Creative Commons community,
and qualitative data gathered from interviews with thought leaders and
focus groups with participants from around the world who create and use
a wide variety of content and media.


この研究は2009年に完了する予定で、アメリカでのアンケート調査とグローバルなCCコミュニティでの投票、世界中の有識者へのインタビューが行われるとのこと。


日本の有識者を選ぶときは、ニコニコ動画の「野生のプロ」とか「嫌儲」とか、ちゃんとわかっている人に聞くといいと思う。。。>中の人

※私はCreative Commonsの中の人ではありません。。。:P



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