2008年10月19日日曜日

竹中平蔵さん講演メモ

竹中平蔵さんが講演なさるということで、Tokyo Gaitame Show 2008 に行ってきました。

竹中さんのお話は、わかりやすくて面白かったです。

ただ、ビデオ撮影禁止だったのでメモと記憶だけを頼りに
金融知識は低いのにがんばって書いているため、間違っていたらご指摘ください(><)


講演タイトルは「世界経済の新潮流〜日本経済再生のシナリオ〜」

まずは「大臣をやめたので、思い切ったことを言っても失言にならないのがいい」と会場を笑わせるところから竹中ワールドスタート。



<日本経済の状況はアメリカのせいだけではない>

先週NY株価が18%下がり、年初からだと米国は36%。
日本の株価は先週24%下がり、年初からだと44%下がっている。
つまり、日本の方がアメリカより下がっており、サブプライム前から下がっていた。
日本政府は日本の経済について、アメリカ発のサブプライムのせいだという声を聞くが、これは違うと思う。
アメリカがよくなれば日本もよくなるというのは間違いである。


<サブプライムについて>

「サブ」とは「下」という意味。サブマリンは海の下を行く潜水艦。サブウェイは道の下を行く地下鉄。
「プライム」とは、優良貸し付けのこと。
「サブプライム」とは、プライムの下にある、所得の低い人向けの貸し付けのこと。
よって、ハイリスクハイリターンである。

サブプライムの商品を作ったことが問題なのではない。ローリスクローリターンの商品もあればハイリスクハイリターンの商品もある。それはあたり前。

では、何が問題だったのかというと、「用リスク管理をやっていなかったこと」。これが真の問題。
リスクがある人に商品を売るときには信用リスクを行うのがあたりまえ。
このような貸し付けを行った経営者の問題である。


<サブプライム問題と日本の不良債権問題は本質的に違うもの>

-日本の金融問題は、banking crisisだった。

日本では、お金を貸し付けると、銀行が債券をもっており、債券が返ってこないと不良債権になる。
銀行の腹が痛む、banking crisis。

銀行というのは、預金を扱う。銀行が壊れて決済が行われないと、支払いをしようとしていたお金が振り込まれない等社会の決済システムが壊れてしまう

-アメリカの金融問題は、money market crisisだった。

アメリカでは、銀行が債券をもつのではなく、証券化していた。よって、銀行がダメージを受けるのではなく、banking crisisではない。

Banking Crisisは、社会に対するダメージが大きいが、コントロールもしやすい。
なぜなら銀行法、預金保険法など、コントロール/チェックするためのすべがあるから。
Money market crisisは、社会に対するダメージは少ないが、コントロール/チェックすることが難しい。
今回はこれをチェック/コントロールすることができるかどうかが鍵になる。


<アメリカは今回のMoney Market Crisis をコントロールできるか>

今回鍵となるポジションについていたのが、ポールソン(米財務長官)とバーナンキ(FRB議長)という金融に非常に詳しい2人だったことは、幸いだった。

ところが、下院は公的資金注入を否決してしまった。これは、金融がわからない人達だからとか、選挙が近いからとか理由はあるだろう。

結果、週起きたのは、confidence crisisであり、上記のbanking crisisやmoney market crisisとは異なる。
何が起こるかわからない、ということで、株価が18%下がった。
このconfidence crisisへの対応方法としては、政府/中央銀行が事態を回収しにいくしかない。

公的資金注入を行い、株価が急反発して上がった。

ところが今週また下がった。
先週はconfidence crisis。
今週はマクロ経済の悪化という別の要因。

金融の混乱は短期的な物であり、半分は収まった。
マクロ経済への負の影響は中期的な問題。

マクロ経済への影響のキーワードは負の資産効果

負の資産効果とはどういうことか。
3000万円の資産を持っていると思っていたら、それが1000万円の価値になってしまう。
そうすると、財布の紐をしめる。消費が落ち込む。
つまり、アメリカ経済に急ブレーキがかかるということ。
よって、経済対策が必要になる。
新政府は、恐らく減税するだろう。

confidence crisisが起きたが、半分収まったと言った。
なぜ半分かというと、公的資金注入はうまくいくかわからない。

ちなみに、与党も野党も1990年代日本が公的資金注入を行い、成功したので日本から学べと言っている。
これは間違いである。
日本の経験は失敗として学ぶべきである。なぜ失敗か。

日本はバブル崩壊から2003-2004年に回復するまで13,14年もかかっている。
1998年に金融国会→1999年に7.5兆円の公的資金投入後、4年間も金融危機は続いていた。
(ちなみに今回のイギリスは8兆円なのでほぼ同額)

失敗の原因は、不良資産の査定をしなかったから
いくらの資産が本当にあるのかきちんと査定し、損失を出し、必要であれば自己資産を入れるということが必要。
この不良資産の査定を、日本ではやらなかった。
だから「この銀行はもっと不良債権があるのではないか」等、事実がわからなかった。

そしてその後、竹中さんの金融再生プログラムでは、ディスカウントキャッシュフローで査定をするようにとした。
当時、日本人は政治家もマスコミもみんな反対した。
政治家は、金融については無理解、無知の人が多い中、
小泉さんのすばらしいところは、専門家の意見をきちんと聞いて、やってくれたこと。

そこで、査定とその査定に基づく注入がきちんとできた。


<発展途上国への影響>

世界経済全体の成長率は、4.4%。
うち、半分はBRICsの4カ国で、2.2%。

中国→天津のサマーダボスで温家宝さんに竹中さんが「中国経済の今後」と「中国経済の世界経済への貢献」について、質問をした。いわく、「中国経済をちゃんと運営することが世界経済への貢献である。」「慎重大胆に貢献する」と。中国の株価は70%落ちたが、インフレの弊害は押さえつつある。

インド→負の影響は少ないだろう。

ブラジル→アメリカと密接であり、成長率は影響を受けるだろう。

韓国/日本→影響を受けるだろう。


<日本の株価が下がった理由>

日本の株価は去年1年で11%下がった。
米国の株価は去年1年で6%上がっている。
日本の株価が下がっているのはサブプライムのせいではない。真の要因は3つある。

1)改革にストップがかかった

1990年代、公共事業はたくさん行われたが、1%成長だった。
小泉時代、公共事業はカットしたが、2%成長だった。
その後自由競争/構造改革がストップした。
現在の日本の期待成長率は1%に落ちてしまった。(3%と言われていた)
よって、消費が下がってしまう。

きちんと改革や新しい事業を推進することが重要。
郵政民営化が行われ、2005年には株価は1年間で42%上がった。
改革をストップしてしまうと、世界での競争に勝てない。去年は株価が11%下がった。

2)コンプライアンス不況が広がった

コンプライアンスとは、法令遵守のこと。法令遵守は当然しなければならない。
だが、現在はコンプライアンスの美名のもとガチガチの規制が行われている。

例えば建築基準法。姉歯事件でチェックが厳しくなったが、それゆえチェックする人が足りない。
その結果、住宅投資が10%マイナスになってしまった。

例えばJ-Power。外国人であるという理由で買収が止められたが、天下り先を確保したいだけではないか?
Financial Timesは"Japan is closed to investors"という記事を書いたが、日本では話題にならなかった。

外資の定義とは、外国人株主が50%以上の場合。
その原理でいくと、SONYもCANONも三井不動産もみんな外資ってことになる。

3)金融がおかしくなっている

アーバンコーポレーションが黒字倒産、ほかにも東証一部上場企業が22社も倒産している。

なぜアーバンは黒字にも関わらず銀行からお金を借りられなかったのか。
金融庁が厳しいからということもあるが、事業分類が間違っているからということもあるだろう。

SPCは、不動産投資扱いになっており、厳しくチェックをされる。
だが、機械産業の設備ビルは機械産業に分類すべきでは。


<どうしたらよいか>

3つアイディアがある。

1)羽田空港を2倍にして、24時間運営にする

観光客は留学生等、日本に来る人を増やすべき。
日本の玄関である成田は20時/21時には閉まってしまう。
法律改正もいらず、すぐできる案である。

2)法人税を下げる「スーパー特区」

日本の法人税は40%、ヨーロッパは30%、アジアは20%
庶民が困っているので所得税を下げ、法人税を上げろという声を聞くが、
強い企業は日本の法人税が高くて嫌なら海外に行ける。
強い企業がいなくなって雇用その他で困るのは、結局庶民である。

全国で無理なら、スーパー特区を作ってはどうか。
実は沖縄でやったが、要件が厳しくて適用件数ゼロだった。これが役人のやり方。これではだめ。

3)東大民営化

日本には、世界でトップ5に入るような強い大学がない。
強い大学は人材供給の面でも重要である。

Harvard、Stanfordはじめ、トップ5はみんな民営。
東大を文部科学省の制約から解き放つべきである。


<ピンチはチャンス>

安く買って高く運用するという意味では、ピンチはチャンスである。

BRICsは世界成長の半分をしめている。幸い現在、円は高い。
日本の金利は低い。外貨建ての銀行預金は円高なのでチャンス。

為替レートは、長期的には物価/購買力平価で決まる。
中期的には経常収支で決まる。
短期的には金利格差で決まる。

資産運用は多様化している。円も外貨もあるし、ローリスクローリターン商品があればミディアム/ハイリスク、ミディアム/ハイリターンの商品もある。

日本の個人金融資産は1500兆円
みんなでがんばって1%の利回りを上げたら、15兆円もできるよ!
消費税は11兆円なので15兆円は大きい。



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