先日「オープンプレスクラブ(OPC)」についての勉強会が開催されました。私は残念ながら現地には行けなかったのですが、ニコニコ生放送でほぼ拝見することができました。大学生・大学院生、フリージャーナリスト、ブロガー、新聞社の社員、研究者、PR会社やネット企業の方など十数人の方が集まられたとのこと。
参加された方々のブログはこちら:
藤代さんのブログ オープンプレスクラブ(OPC)構想についての第1回勉強会を行いました
実際に参加された方のレポートは上記を参考にして頂き、私は思うところと皆さんの発言とをまとめつつブログしてみたいと思います。
首相官邸、省庁、地方自治体、地方公共団体、警察、業界団体などの組織に設置された「記者室」を取材拠点にしている、特定の報道機関の記者が構成する組織のこと。基本的には、「日本新聞協会」に加盟している新聞社や通信社、放送局などの大手マスメディアの記者のみが会員となっている場合が多いとのことだが、省庁や組織により運営方針は異なる。
記者クラブに入っていると、情報提供を受けられるなどのメリットがあると言われている。また、「記者室」は官公庁の建物内などに設置され、机や椅子、テレビやコピー機、電話やファックスなどが配置され、記者会見用のスペースもあり、便利な取材拠点となっている。なお、記者室の賃料は無料もしくは非常に安価であるらしい。
●記者クラブがなぜ生まれたかとそのメリット
��)国民の知る権利を代弁:情報開示に消極的な公的機関に対して、記者クラブという形で結集して公開を迫る。
3)会見の効率化:大臣に質問したい国民が一万人会見に来られて無駄なこと聞かれても時間の無駄なので、プロである記者が代表して質問を行う。
●記者クラブの問題点
��)公官庁と記者クラブ加盟報道機関が癒着し、情報操作を行っている?官報接待や贈収賄の問題。
●記者クラブの現状
1)記者クラブメンバー以外は入室できず、かつ質問できる人および質問内容が幹事社によって決められている場合。台本が決められているところもある。
2)記者クラブメンバー以外は入室できない場合。ただし質問はメンバーであれば自由に行える。
3)記者クラブメンバー以外はオブザーバーとして参加することはできるが、質問する権利は与えられていない場合。
4)記者クラブメンバー以外も入室して質問もできる場合。
(なお、どこかの記者会見で「質問を許されないので意見します」と言って発言した強者がいたように記憶しています。ちなみに地方の記者会見なんかでは、よそもののジャーナリストが来て質問するとよそもののくせに質問すんなと攻撃されるらしい。。。)
省庁毎の対応ですが、OPCでの情報、ネットの情報、東京新聞の記事を元に書かれたこちらのブログの情報を元にちょっとまとめてみました。
•外務省→岡田外務大臣は、「事前の登録を必須とする」ことを条件に、全てのメディアに定時会見を開放すると発表。といっても完全にオープンではなく、参加できるのは「日本新聞協会」「日本民間放送連盟」「日本雑誌協会」「日本インターネット報道協会」「日本外国特派員協会」の各会員と、「外国記者登録証保持者」となっている。これらの媒体に定期的に記事を執筆しているフリーランスジャーナリストも参加を認められている。
•金融庁→亀井金融・郵政担当大臣は、記者クラブの会見の後に、記者クラブに属していない週刊誌・インターネットメディアなどの記者向けの記者会見を実施。(また、会見時以外でも金融庁のエレベータ前にはフリーの人が集まっており、質問すれば答えてくれるらしい。)
•総務省→原口一博総務相の記者会見は、記者クラブに加盟していないメディアにも開放された。J-CAST等のWebメディアも参加し、ニコニコ生放送が生中継も行った。ただし、大臣に対し質問をするには登録が必要で、総務省記者クラブが審査した上で登録可否を決めるが、登録には日本民間放送連盟や日本雑誌協会など、記者クラブが指定した5団体の会員社に属している必要がある。
•消費者庁→幹事社の了解を得れば、専門紙も参加できる。なお、消費者庁の記者クラブは常駐はなく、電話もなく、ゆるいらしい。
•厚労省→外部からの参加希望は、事前にクラブが認めればOK。
•国交省→従来から専門誌やフリーランスに質問なし参加を認めている。
•防衛省→もともと登録54社の記者ならば誰でも参加でき、外国特派員協会加盟の外国人プレスは質問なし参加ができた。
•省庁はどこか一つ穴をあけると次を通しやすくなるので、前例を作ることが大事。
・実態としては専従の事務もいないし事務局もない。手が足りておらず、PRや情報公開もされておらず、入りたくても入れない状態。
・会員になるには年会費12万円が必要、個人会員の場合は年会費1万2千円。
→年会費は個人で入るのは高いけれど例えばOPCでほげほげ団体を作り、数千人集まって一人数百円ずつとか払って、その団体が「日本インターネット報道協会」に加盟しちゃえば事実上オープンだよね。
・ドワンゴは入れる→ニコニコのアカウントをもっている人がニコ生やりますということで入れる?
・ライブドアは入れる→ライブドアアカウント持っている人は会見参加できる?BLOGOS参加ブロガーなら入れる?ライブドアPJ(パブリックジャーナリスト)なら入れる?
●日本の市民ジャーナリズムは崩壊の危機?
•ブロガーがTwitterにハマってブログを書かなくなるという現象も。。。
●本当の問題は何?
1)公官庁や政治家が国民に伝えたい情報が正しく伝わらないこと
•マスコミが恣意的に発言内容を切り取ることで、発言者が意図したメッセージと報道されるメッセージに齟齬が起きる場合がある。
アメリカのGov2.0は単に誰々もTwitter使い始めました〜というアピールのために使われているのではなく
日本のGov2.0もちゃんとそうあってほしい。そのツールは何であってもかまわないから。
2)国民が知りたい情報が正しく伝わらないこと
•権力とマスコミの癒着の問題。どこかで我々が知りたい情報が止められてしまう。国民の知る権利の阻害。
3)国民が知るべき情報が正しく伝わらないこと
•国民が知りたい情報と、知るべき情報がイコールであるとは限らない。実は国民が知りたいと思っていない、知るべきと気づいていない情報が一番重要なのかもしれない。(先日テレビをつけたら国会中継の石破さんの質問の時間で、民主党が知らない事実、外交上知っておくべき情報等を滔々と語りつつ質問を重ねていた。ああいうのはマスコミや国民の「質問」に答えているだけだと出てこないだろうなあと思った。)
4)報道の質
•前にもこのブログに書きましたが、去年アメリカのDepartment of Defense (DoD)に取材に行って面白いと思った話の一つが彼らのブロガー施策。防衛関連に関心があってブログを書いている人が多いけれど、情報が足りていない。しかし、DoDとしてはいくら情報を出してもマスコミは「ニュースだ」と思わないと記事にしてくれない。記事に出ないとブロガーに情報がいかない。この悪循環を断ち切るため、バグダッド等の現場にいる人たちとブロガーを電話会議でつないだというもの。これがブロガーにも現場の人たちにも非常に好評でずっと続いている。内容は本当に多岐に渡る。そもそも防衛関係に関心のあるブロガー達を集めているのでマスメディアよりもずっと良い質問をし、ずっと良い記事を書くという。しかも、それらのブログの記事によってメディアが勉強するようになって、メディアの知識レベルもあがったとのこと。
●OPCは今後何をやるのか
•記者クラブ本体につっこむよりまず自分達でできることをやる。
2/9追記
深水さんが「OPC 官邸・省庁等記者会見 情報共有カレンダー」なるものを作っておられました。
省庁の記者会見のスケジュールなどご存知の方は是非#fpress をつけてTwitterで情報提供をお願いします。
2/10追記
深水さんが総務省の大臣会見に参加し、ブログ記事を書いておられます。
2/19追記
ブログ「添え物でも添え物らしく」の @parsleymood さんが、消費者庁大臣会見(福島大臣)に参加し、ネットへの生放送とTwitterでのレポートを敢行されたとのことでOPCで記事が書かれています。
3/3追記
深水さんが「省庁会見オープン成績表」の作成を開始されています。
その他関連記事:
上杉隆さんのダイヤモンドでの連載「週刊上杉隆」
反対派の意見も紹介。「記者クラブ制度批判は完全な誤りだ」
「記者クラブ制度は国民の知る権利を担保している」新聞社在勤中に、新聞協会の記者クラブ問題小委員会のメンバーとして「記者クラブ見解」を作成したことがある。以前は、記者クラブを「親睦組織」と規定していたのだが、それを「公的機関の情報公開、説明責任という責務」と、メディア側の「国民の知る権利を担保する責務」が重なりあう場に位置するといった表現に改めた。「記者クラブとしての決まりごと」が出てくる。分厚い白書や調査報告書のたぐいなどは、精緻な読み込みや関連取材、執筆作業にある程度の時間が必要で、「解禁日時の設定」といったことが行われる。筆者の体験では、政治資金収支報告書などは1週間前の事前発表が慣例だった。記者クラブを完全開放して、そういう「しばり」が通用しなくなると、中途半端なかたちで報じなくてはならない。記者クラブの「報道協定」は国民の知る権利を保証するうえでの「知恵」なのだが、一般にはどこまで理解してもらえるか。
2010年3月1日の総務省【今後のICT分野における国民の権利保障等の在り方を考えるフォーラム】(第3回会合)をめぐるTwitterまとめ
3/26追記:
4/23追記: